都市ガスとプロパンガスの違いとは?料金・安全性・不動産売買の注意点を鑑定士が解説

皆さんは気になっている物件のガスが「都市ガス」なのか「プロパンガス」なのか、ちゃんと確認できていますか?なんとなく、「ガスはガスでしょ。どっちでも別に暮らせるし。」くらいで考えていませんか?無理もないと思います。コンロをひねれば火がつく、お湯が出る。普段の生活では、⁠ガスの種類を意識する機会はあまりありませんから。
ただ実はこのガスの種類、料金や災害時の強さだけでなく、売買や賃貸経営での手間と費用にまで差が出るポイントなんです。
今日は両者の違いを整理したうえで、不動産売買で注意すべき点までお伝えしていきます。

ガスコンロの青い炎

都市ガスとプロパンガスの基本的な違い

供給方式と使われている地域の違い

一番の違いはガスの届け方です。都市ガスは地下に埋設された導管を通して、気体のまま各家庭へ供給されます。日本ガス協会によると都市ガス事業者は全国に約200社あり、導管が敷設されているのは国土面積の1割にも満たない都市部が中心です。一方、⁠プロパンガス(LPガス)は液化してボンベに充填し、事業者が各家庭へ配送します。導管が通っていない地域でも使えるのは、この方式のおかげです。

都市ガスの場合、⁠2017年のガス小売全面自由化以降は、導管を管理する事業者とガスを販売する小売事業者が分かれています。東京ガスネットワークは、どの小売事業者と契約する場合でも、ガス導管の引込み工事や内管工事の手続きは導管事業者が受け付けると案内しています。つまり、⁠都市ガスの物件でも、契約先の小売事業者を選べる余地がある一方、導管そのものは地域ごとに決まっている、ということです。

世帯数で見ると資源エネルギー庁の資料(令和4年3月末時点、全世帯数約5,976万件)では都市ガスが約2,652万件(44%)、LPガスが約2,173万件(36%)、オール電化などその他が約2割でした。地域差も大きく、⁠資源エネルギー庁は47都道府県のうち32の道県では、LPガスの使用世帯数が都市ガスを上回ると説明しています。地方の物件を検討する場合は、プロパンガスの可能性が高いと考えておいたほうがよいでしょう。

成分・熱量・空気との重さの違い

ガスの成分も違います。都市ガスの主成分はメタンで、原料の大部分は輸入された液化天然ガス(LNG)です。LPガスの主成分はプロパンやブタンです。メタンが気体から液体になる(凝縮)温度はマイナス162℃と超低温ですが、プロパンはマイナス42℃、ブタンはマイナス0.5℃で加圧すれば常温でも液化します。だからボンベに詰めて運べるわけです。熱量は、⁠東京ガスが供給する都市ガス(13A)が1㎥あたり45MJなのに対し、プロパンは1㎥あたり約100MJと2倍以上あり、プロパンの方が強いです。

空気との重さの違いは安全面で効いてきます。日本LPガス協会によるとガスの比重はプロパンで約1.5、ブタンで約2.0と空気より重く、漏れると床付近にたまります。都市ガスは空気より軽いため、天井付近に上がります。ガス漏れ警報器の位置が、都市ガスは天井付近、LPガスは床付近と違うのはこのためです(設置位置の目安は機器の説明書に従ってください)。

都市ガスとプロパンガスの違いの一覧表

料金の違いと、2024〜2025年の制度改正

料金の決まり方はまったく別物

都市ガスは2017年4月のガス小売全面自由化により、料金設定は原則自由になりました。ただし、⁠使用者保護の必要性が特に高いとして経済産業大臣が指定した供給区域では、経過措置として小売料金規制が残っています(電力・ガス取引監視等委員会)。つまり、⁠地域によっては、今も規制を受けた料金が使われています。

LPガスは、⁠事業者が自由に料金を決めます。しかも事業者は全国に1万6,381者(2022年12月末時点)もあります。石油情報センターの調査(2026年8月調査分、基本料金・消費税込み)によると、10㎥使用した場合の全国平均は9,822円でした。地域別に見ると関東が9,238円、北海道が11,663円と地域でも差があります。同じ地域でも事業者によって単価が違うため、LPガスは「物件や業者ごとに確認が必要」な料金だといえます。

料金表を見るときは基本料金、従量単価(1㎥あたりの単価)、そして設備料金の3つを分けて確認し、「10㎥使うといくらか」に置き換えて比べると分かりやすくなります。なお都市ガスとの単純な比較は、供給区域や契約メニューによって前提が変わるため難しいのですが、一般にはLPガスのほうが割高になりやすいと言われています。

三部料金制と、入居前の料金提示(液石法施行規則の改正)

LPガスの取引は液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液石法)の施行規則の改正(令和6年4月公布)で大きく変わりました。背景には、⁠「無償貸与」という商慣行があります。LPガス事業者が、⁠賃貸住宅のオーナーなどにガス器具だけでなくエアコンやWi-Fi機器まで無償で提供し、後からその費用をガス料金に上乗せして入居者から回収する、という慣行です。資源エネルギー庁の資料では入居者は入居後に料金を知ることが多く、事実上、選択の機会がない点が課題とされています。

改正の中身は次のとおりです(資源エネルギー庁の説明資料)。まず2024年7月2日に正常な商慣習を超えた利益供与や、事業者の切替えを制限するような条件付き契約の禁止、そしてLPガス事業者による入居希望者への料金の事前提示(努力義務)が始まりました。提示は直接のほか、オーナーや不動産管理会社、不動産仲介業者などを通じて行えるとされています。

続いて2025年4月2日には、基本料金・従量料金・設備料金の三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示。新規・既存の契約ともに対象)が始まり、エアコンやWi-Fi機器など、ガス消費と関係のない設備費用の料金計上が禁止されました。賃貸住宅向けではガス器具などの消費設備費用も計上できません。ただし、⁠この計上禁止は新規契約のみが対象で、既存契約は早期移行の努力義務とされています。

LPガス取引ルールの改正ポイント(2024年・2025年施行)

安全性・災害時・ガス器具の違い

災害時の強さは「一長一短」

災害に強いのはどちらか、という質問をよく受けます。結論から言うと一長一短です。資源エネルギー庁によると都市ガスの導管は大部分が地中にあるため、台風や豪雨の影響を受けにくく、地震でも多少の揺れでは損傷しません。ただし、⁠大きな揺れを感知すると二次災害を防ぐためにいったん供給を止め、安全確認をしてから再開します。低圧導管の耐震化率は2025年度末に90%という目標を前倒しで達成し、次の目標として2030年度末に95%が計画されています。また原料のLNGは大部分を輸入に頼っているため、調達先の多角化など、供給を安定させる取り組みも進められています。

LPガスは各家庭に設置されたボンベで完結する「分散型」です。資源エネルギー庁は、家庭用は2本セットで設置されるため、予備の1本により災害時にも1ヶ月程度生活できるガスが備蓄されている状態になると説明しています。被災しても1戸単位の点検・修理で復旧しやすい点も特長です。どちらが良いかは地域の災害リスクや住まい方によっても変わるため、「災害に強いから、こちら」と単純に決めるのは避けたほうがよいでしょう。

ガス器具は「ガス種専用」

見落としがちなのが、ガス器具の違いです。ガスコンロや給湯器は都市ガス用とLPガス用で別の仕様になっています。リンナイの案内では機器が対応するガス種と供給されるガス種が違うと不完全燃焼による一酸化炭素中毒や、爆発着火、故障のおそれがあるため、絶対に使用しないよう注意されています。都市ガスの側にも「13A」のようなガスの種類があり、供給地域によって異なります。ガス種の変更は、⁠個人で交換するのではなく、メーカーに修理対応として依頼する扱いです。引っ越しや購入の際は、お持ちの器具が新居のガス種と合っているかを必ず確認してください。

不動産売買で注意すべき点(買主編)

重要事項説明では「ガスの種類」と「契約関係」を確認する

宅地建物取引業法35条の重要事項説明では、飲用水・電気・ガスの供給施設及び排水施設の整備状況が説明事項になっています(国土交通省の説明資料)。ガスについては、⁠都市ガスかプロパンガスかの別が説明されるのが一般的です。ここで終わらせず、⁠LPガスの場合は事業者名、料金(基本料金・従量単価・設備料金)、ボンベや配管などの設備の所有者まで重ねて質問しておきましょう。LPガスは、⁠液石法に基づく書面で配管や機器の所有権の所在を明示する決まりがあるため、書面の確認も有効です。

書面だけでなく、⁠現地でも確かめておきたいところです。内見のときに敷地内や建物の外周にガスボンベが置かれているか、ガスメーターの近くに事業者名の表示があるかを見ておけば、ガス種の見当がつきます。売主や仲介会社に直近のガス料金の検針票を見せてもらうのも有効です。実際の使用量と料金が分かれば、入居後の光熱費の見通しが立てやすくなります。

都市ガスの物件は「前面道路の本管」と引込み費用

都市ガスの物件でまず確かめたいのは、前面道路にガスの本管が埋設されているかどうかです。東京ガスネットワークは、標準的な木造一戸建ての新築で敷地内のガス管・ガス栓の工事費が188,540円(税込、2026年1月1日以降の申込み分)という費用例を示しています。ただし、⁠これには、前面道路にガス管がない場合に必要となるガス本管の費用は含まれていません。つまり、⁠本管が通っていない土地では、都市ガスを使うための費用が別に必要になる可能性があります。この金額はあくまで一例で、事業者や工事内容によって変わります。古い物件で引込み済みかどうか分からない場合は、ガス事業者に問い合わせるのが確実です。

LPガスの物件は「貸付配管」と、切替時の精算がカギ

LPガスの戸建てで注意したいのが、「貸付配管」です。資源エネルギー庁の資料によると工務店や建設業者が提携するLPガス事業者に屋内配管工事をさせ、配管費用を建築費に含めず、配管の所有権をLPガス事業者が持ったまま供給する商慣行があります。これが、⁠事業者を切り替えようとしたときに、高額の配管費用を請求される原因になってきました。同じ資料は売買の場合でも、物件所有者の意思でLPガス事業者の切替えは可能だが、切替えにあたって、無償貸与された設備・機器等の精算が生じる場合があると指摘しています。

配管の所有権をめぐる裁判例では、民法の「付合」により所有権が消費者側にあるとして、事業者が敗訴した例が多数あります。一方で事業者側が勝訴した例もあり、一律には言い切れません。なお同じ資料は、マンション売買の場合は、管理組合の意思によりLPガス事業者の切替えが可能としています。戸建てとマンションでは、切替えを決める人が違う点も押さえておきましょう。だからこそ、⁠契約前に配管・設備の所有者、切替時の精算の有無と条件を書面で確認しておくことが大切です。

不動産売買前のガス確認チェックリスト

売却・賃貸経営で注意すべき点(売主・オーナー編)

売却前に整理しておきたいこと

売主の立場では買主から聞かれる前にガスに関する情報を整理しておくと、売却がスムーズになります。具体的にはガスの種類、事業者名、直近の料金の分かる資料、そしてLPガスなら、配管やボンベ、給湯器などの設備の所有者と切替時の精算の有無です。精算の条件が分からないまま売却すると、買主が事業者を切り替えようとしたときにトラブルになるおそれがあります。契約書面や、⁠事業者への確認で事前に把握しておきましょう。

賃貸オーナーは「入居前の料金提示」への対応を

賃貸住宅では2024年7月から、LPガス事業者に入居希望者へ料金を事前に提示する努力義務が課されています。提示はオーナーや管理会社、仲介会社を通じて行われることも想定されていますので、これらの立場の方にも協力する場面が増えそうです。さらに2025年4月以降は、新規契約で賃貸住宅向けのLPガス料金にガス器具などの消費設備費用を計上できなくなりました。既存契約は早期移行の努力義務とされていますので、契約を結んでいるLPガス事業者と、料金の内訳を一度確認しておくとよいでしょう。入居者からの問い合わせが増えたときにも慌てずに済みます。

LPガスから都市ガスへ切り替えられる?

結論から言うと条件次第で可能です。まず前面道路にガス本管があり、供給区域内であることが前提になります。東京ガスネットワークはプロパンガスから都市ガスへの切替え相談を受け付けており、指定工事業者が最寄りのガス管から敷地内へ引込み工事を行うとしています。そのうえでガス器具が都市ガス用でなければ、メーカーでの変更対応や買い替えが必要になります。さらにLPガスの設備が貸与されている場合は、LPガス事業者への精算が生じる場合もあります。費用の総額は引込み工事、器具、精算の合計になりますので、見積りを取ってから判断しましょう。判断の前に確認しておきたいのは、次の4点です。

  • 前面道路にガス本管があり、供給区域内であるか
  • 敷地内への引込み工事費と本管が必要な場合の費用の見積り
  • ガス器具の買い替え・ガス種変更にかかる費用
  • LPガスの設備(配管・給湯器など)の所有者と精算の有無・金額

見積り額が出たら、⁠今のLPガス料金との差額で、何年で元が取れるかを試算してみると判断しやすくなります。

まとめ

ガスの種類は「暮らし」と「取引」の両方に関わる

都市ガスは導管、⁠LPガスはボンベで届き、料金の決まり方や災害時の特徴も違います。不動産売買では重要事項説明のガス欄に加え、都市ガスなら前面道路の本管と引込み費用、LPガスなら貸付配管や設備の所有者、切替時の精算を確認しておくことが、トラブルを避ける近道です。売却・賃貸経営では2024〜2025年の制度改正を踏まえた情報整理も欠かせません。あなたが検討している物件のガスは、どちらで誰が配管を所有していますか。まずは書面で確認してみてはいかがでしょうか。

※本記事の内容は資源エネルギー庁・経済産業省の公開資料(液化石油ガス流通ワーキンググループ中間とりまとめ、LPガスの取引適正化に関する説明資料ほか)、日本ガス協会、日本LPガス協会、石油情報センター、東京ガスネットワーク、国土交通省の公開情報をもとに作成しています。制度・料金は変更される場合があります。個別の物件については必ず宅建業者・ガス事業者等の専門家にご確認ください。


冨田隼平

WRITER冨田 隼平
不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士ほか
大手信託銀行にて不動産売買仲介、その後業界最大手の鑑定会社にて不動産鑑定評価業務に従事。
現在は独立し、鑑定士として価格調査・鑑定評価・コンサルティングを提供するほか、エージェントとして売買・賃貸のサポートなども行っています。

関連サービス:売買・賃貸サポート →

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