2026年の不動産市況はどう動く?金利・税制・エリアの明暗を鑑定士が読み解く

毎年、数々の専門家が発表する今年の不動産市況について、私も書いてみようと思う。不動産というのはプロだけでなく一般の方にとっても切り離せないものであるからこそ、気になるものだろう。

ただ、このような市況予測を毎年確実に当ててる人はいるのだろうか。そもそも、不動産というのは一つとして同じものはなく、様々な要因の相互作用によって成り立つものであるから、一概に「こう動く」なんて一括りにするのは無理があります。

そこで本記事では、宅建士兼不動産鑑定士としての現場感覚と、最新のマクロ状況を重ね合わせ、2026年の不動産市況をちょっとだけ覗いてみよう!

この記事で分かること

  • 2026年の不動産価格の最新動向と、今後の推移の見通し
  • 金利・税制改正・円安が、購入や売却にどう影響するのか
  • エリアごとの明暗と、見極め方
  • 売る・買う・保有、それぞれの立場での判断軸

2026年、不動産価格は「やばい」のか?

いま不動産市場で起きていること

ひとことで言えば、「上昇基調は継続、ただし買い手はシビア」。これが2026年前半の実感です。

地価公示は、5年連続で上昇(2026年公示で全用途平均+2.8%と、バブル期以来35年ぶりの伸び率)。2025年の首都圏中古マンション成約件数は、2019年以降で最多水準。一方、首都圏の新築マンション平均価格は1億円を超え、共働き世帯でも手が届かなくなってきました。

査定に伺うと、売主さんから「隣の部屋が◯◯万円で売れたらしい」と聞くことがあります。ところが実際には、買主さん側の指値は厳しい。成約価格は売出価格から数百万円引き、というケースも珍しくありません。需要はあるのに、財布の紐は固い。そんな二面性が現場の景色です(いわゆる「ワニの口」状態)。

「バブル崩壊」と言われる理由と、実際のところ

結論から言うと、崩壊というより「踊り場」に差し掛かったと見ています。

年収倍率(物件価格÷世帯年収)は、首都圏マンションで10倍を超えることが散見されます。適正水準とされる5〜7倍をはるかに上回るため、「これ以上は上がらない」という心理は確かに広がっています。

とはいえ、暴落シナリオの材料は不足気味。大手デベロッパーは供給戸数を絞り、円安を背景に海外投資家の買いも止まっていません。「下がるのを待つ層」が買い控えても、別の買い手が価格を支える構図が続いているのです。

鑑定士としての結論

まさに需要者と供給者の間の綱引き状態と見ています。需要者は金利不安や高すぎる不動産価格をチラチラ見ながら時間稼ぎ状態。一方、供給者は円安による海外投資家の流入や建築費の著しい高騰を背景に土俵際で踏ん張っている。これが「ワニの口」を引き起こしている所以だと考えています。

2026年は「都心」と「郊外」で何が違うのか

都心の物件はなぜ値上がりが続いているのか

千代田・中央・港・新宿・渋谷、いわゆる都心5区の新築マンション用地は、枯渇状態と言っていいレベルです。

以前、あるデベロッパーの仕入れ担当者から伺った話が印象に残っています。「港区の用地情報が回ってきても、入札で大手に負ける。2番手・3番手価格を出しても、桁がひとつ違う」。競争の過熱ぶりは、それくらい異常な水準なのです。

供給が細る一方で、需要は円安によって海外からも流入しています。1ドル160円に迫る昨今、海外富裕層から見れば、日本の都心不動産はディスカウント状態。実需層が悲鳴を上げる価格帯でも、投資マネーが粛々と吸収してしまう構造になっています。

都心近郊と郊外、それぞれの勝ち組エリア

ただし、「都心以外=下落」と単純には言えません。23区内でも再開発の進む中野駅、京成立石駅、金町駅などの拠点駅は、地価上昇率が23区平均を上回ることもあります。郊外でも、相模大野や流山おおたかの森といった再開発駅は堅調です。

条件はシンプルで、都心まで1時間以内・駅徒歩10分以内・駅前に商業集積がある。この3点がそろえば、都心近郊では堅調です。郊外では「駅徒歩10分以内」の縛りは緩みますが、駅前商業の規模がより効いてきます。やはり不動産は立地が最重要!

一方、バス便、駅徒歩20分超、人口減少が進む地方中核都市の周辺部は、すでに下落トレンドに入っています。利便性に妥協できるかどうか、価格の明暗はその一点で分かれます。

新築と中古で値動きが変わる理由

新築マンションの価格は、もはやデベロッパーの意思で下げられません。建築コストがコロナ前比で3~4割程度上昇(現場のヒアリングベースではそれ以上)し、人件費も右肩上がり。売出価格が下がらないのは「強気」だからではなく、「下げられない」のです。赤字になってまで、ピカピカのマンションを建てるわけにはいきませんよね?

その結果、中古マンションへのシフトが加速しました。特に築10年以内で立地の良い中古物件は、新築価格に引っ張られる形で強含みが続いていて、ときに新築マンションの価格を超えることもあるくらいです。

2026年の不動産価格を動かす3つの要因

金利:住宅ローンはこれからどうなる?

日銀は2025年12月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に引き上げ、30年ぶりの水準となりました。メガバンクの変動金利平均は、2026年4月時点で15年ぶりに年1%を超えています。

金利が上がると、総返済額にどう効くのか。試算してみましょう。

  • 借入条件:5,000万円、35年、元利均等返済
  • 計算式:元利均等返済額=借入額×月次金利×(1+月次金利)^返済回数÷((1+月次金利)^返済回数−1)
  • 結果:金利0.5%なら月々約13.0万円、金利1.0%なら約14.1万円
  • 差額:月額約1.1万円、35年総額で約480万円増
金利月返済額35年総返済額金利0.5%時との差額
0.5%約13.0万円約5,450万円
1.0%約14.1万円約5,930万円+約480万円
1.5%約15.3万円約6,430万円+約980万円

0.5%の違いで500万円近く跳ね上がる計算です。

ただ、現場の実感として、この金利上昇が即座に価格を押し下げているかというと、そうでもありません。まだまだ低い金利であるという見方のほか、銀行の優遇幅拡大や住宅ローン控除の拡充で、ユーザー体感の負担増は想像より緩やかに収まっています。今後次第なところは大きいですね…

税制改正:2026年から変わる控除と相続のルール

2026年度の税制改正は、取引の潮目を変える可能性があります。

注目すべきは、中古住宅の住宅ローン控除の拡充です。借入限度額の拡大と、床面積要件の緩和が盛り込まれました。新築偏重だった従来の税制から、中古へ誘導する方向に舵が切られたわけです。その理由は、前記の話からも容易に想像可能ですね。

対照的に、風向きが厳しくなったのが相続税対策の分野。いわゆるタワマン節税に対しては、評価ルールの厳格化が段階的に進んでいます。節税目的だけで高層階を買う投機的な動きは、以前より妙味が薄くなったと感じます。

円安と建築コスト:新築が下げられない構造

新築が下がらない理由を分解してみます。

建築コストは、鉄筋・コンクリート・人件費の三本柱。鉄筋は原油価格と輸入為替、コンクリートはセメントの国際価格、人件費は国内の労働需給。どれも上昇要因しかありません。

とりわけ円安は、じわじわ効いてきます。1ドル140円だった時期と比べ、160円に迫る勢いの現在、同じ輸入資材の仕入れで7〜8%のコスト増が常態化。デベロッパー側は分譲価格に転嫁しなければ利益が出ず、新築価格は「下げられない構造」に入り込んでいます。

これからの見通し:2026年後半〜今後数年

金利はどこまで上がるのか

政策金利のピークについては、多くの専門家が1.5〜1.8%を見込んでいます。2026年後半から2027年にかけて、段階的に引き上げられるシナリオがメインです。

住宅ローンの変動金利で言えば、1.5%前後のレンジを想定しておくのが堅実でしょう。ただし、日銀は景気への配慮もあって急激な利上げは避ける構えで、四半期ごとに慎重に判断というペースが基本線です。

下がりやすいエリア・下がりにくいエリア

現場感覚を踏まえ、エリアを3つに分類してみました。

ランク特徴具体的なエリア・物件タイプ
Aランク(安泰)資産価値が極めて堅調都心5区、再開発進行中の拠点駅(中野・浦和・相模大野など)
Bランク(堅実)交通・生活利便性が高い23区内の駅徒歩10分圏、条件を満たす都心近郊の駅近
Cランク(危険)流動性が低くリスク大災害レッドゾーン、管理不全マンション、郊外バス便物件

よく現場でいろいろな方と会話していると「立地=駅距離」と勘違いされている方が多いのですが、立地は駅距離だけでなく、駅力、都心への接近性、主要路線数、大型商業施設の有無等さまざまです。田舎徒歩1分vs.都心徒歩10分、どちらの物件のほうが価値が落ちにくいかは一目瞭然ですよね?

中長期で見ておきたい3つのリスク

5年、10年先を見据えると、3つのリスクを頭に入れておきたい。

ひとつ目は人口減少。首都圏でも、既に人口が減り始めたエリアは多くあります。ふたつ目は管理。業界には「マンションは管理を買え」という言葉があり、修繕積立金と長期修繕計画の実態が、築20年以降の価値を大きく左右します。修繕費やリフォーム代も上がってますので、マンションだけの話ではありません。最後は災害リスク。ハザードマップ上のレッドゾーンは、ローン控除や保険の対象から外す等制限が強まる傾向にあります。

ここまで読んで「それで、結局自分はどうすれば?」と思った方は、お気軽にご相談ください。

2026年、あなたはどう動くべきか

売却を考えている方へ

価格の高値圏にある今は、売り時としての条件がそろっています。

特に、立地の良い中古物件は現在が需給のピーク。金利がさらに上がると、強気の価格で売り抜くのは難しくなります。地方・郊外の相続物件のように、中長期的に価値が落ちていく物件は、早めの決断が吉と出るケースが多いでしょう。

慌てて相場より安く売るのが最悪のシナリオです。自分で相場を調べたうえで査定は最低でも3社。それぞれをじっくり比較していきましょう!

購入を考えている方へ

「今買っていいのか、もう少し待つべきか」。最も多い相談です。

結論としては、ライフプランが固まっていて、無理のない返済計画が組めるなら買い時でしょう。インフレが続く環境では、現物資産を持つこと自体が守りの戦略になります。家賃の上昇など、別の要因も絡んできますので、このあたりはまた別の機会に解説します。

ただし、背伸びは禁物。返済比率は手取り年収のMAX30%以内、できれば25%以内に抑えるのが、現場で得た経験則です。

保有を続ける方へ

保有中の方こそ、「棚卸し」の発想を持っていただきたい。

ご自身の物件が、先の表でいう「Aランク・Bランク・Cランク」のどこに位置するのか。修繕積立金の積立状況、周辺の再開発計画。年に一度チェックするだけで、資産価値の変化に早く気づけます。

Cランクに存する、またはその兆候が見えるなら、早めに売却し、安定したエリアへの買い替えを検討するのも手。住居であると同時に、数千万円から億単位の資産。経営対象として見る視点が、これからの不動産保有には欠かせません。

まとめ:2026年の不動産市況との向き合い方

  • 価格は上昇基調だが「踊り場」。エリア・物件ごとの二極化が進行
  • 金利・税制・円安の3要因で、新築は下げられず、中古へのシフトが加速
  • 売却・購入・保有のいずれも、個別物件の価値とライフプランをセットで判断する時代

2026年の不動産市場は、「どこを買っても上がる」時代から、「目利きが問われる」時代へ完全に移行しました。金利上昇や物価高は購入者にとって逆風です。それでも、正しい知識を持つ人にとっては、優良物件を冷静に選別できる好機でもあります。

悩んだら、専門家(鑑定士でもある私)に相談してください。第三者的な価格の見極めは、相場より安く売らないための、あるいは高値掴みを避けるための、ひとつの武器になります。ご自身と家族の資産を、主導権を持って守り育てていきましょう。

冨田 隼平
宅地建物取引士・不動産鑑定士・2級ファイナンシャルプランニング技能士ほか
大手信託銀行にて不動産売買仲介、その後業界最大手の鑑定会社にて不動産鑑定評価業務に従事。現在は独立し、不動産の売買サポートのほか、不動産に関する全般的なコンサルティングを提供。

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