10階建マンションなら何階がおすすめ?階数別のメリット・デメリットとコスパを鑑定士が解説

皆さんは、⁠マンションを選ぶとき、階数についてどれくらい真剣に考えていますか?なんとなく、「高い階のほうが眺めも良くて、価値も高そう。」くらいで考えていませんか?その感覚は、決して間違いではないと思います。上の階ほど価格が高くなるのは、実際に市場でも見られる傾向ですから。ただ実は、⁠階数の違いは、価格だけでなく、毎日の時間、安全、お金の面にまで、じわじわと効いてくるんです。ちなみに筆者は、⁠今年、1階に引っ越しました。住んでみて一番ありがたいと感じているのは、エレベーターを待つ時間がなく、建物の外に出るのが一瞬になったことです。

今日は、⁠10階建マンションを題材に、1階から最上階まで、縦方向だけに絞って、価格・時間・リスクをデータで比べていきます。

エレベーターの階数ボタンを押す手元

先に結論:目的で選ぶ。比べ方も整理しておく

10階建マンションは何階がおすすめ?「正解の階」は、優先順位で変わる

結論から言うと、⁠10階建マンションの正解の階は、何を優先するかで変わります。数字を踏まえた目安は、次の3タイプです。

  • 時間とコスパを最優先する人:1階〜3階。価格が最も低く、⁠エレベーターの待ち時間がほぼ不要か(階段も使える)、少なくて済みます。
  • バランスを重視する人:4階〜6階。価格は1階より約7〜9%高い程度で、防犯面や眺望も改善し、エレベーターの時間ロスも年16〜18時間程度に収まります(試算)。
  • 眺望と静けさを重視する人:9階〜10階。価格は約10%高く、エレベーターの待ち時間なども増えますが、眺望が良く(もちろん周りに遮蔽する建物などがないことが前提ですが)、最上階なら上階の生活音を気にしなくて済みます。

理由は、⁠このあと順番に説明します。なお、⁠同じ階の中での比較(角部屋、方角など)は、この記事では扱いません。

比べるのは、価格・時間・防犯・災害・快適さ・お金の6つ

総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、共同住宅のうち「6〜10階建」は532万1千戸で、全体の21.3%を占めています。10階建は、⁠ごく一般的な規模のマンションです。この10階建を、⁠1階、2〜3階、4〜6階、7〜9階、10階(最上階)の5つに分けて、6つの物差しで比べます。

不動産鑑定評価基準も、区分所有建物の専有部分に係る個別的要因として、「階層及び位置」「日照、眺望及び景観の良否」「エレベーター等の共用施設の利便性の状態」などを挙げています。鑑定の世界でも、⁠階数は価値を左右する大きな要素として、はっきり位置づけられているのです。

ちなみに、⁠インターネットには「人気の階数ランキング」もあります。ただ、⁠有効回答が200名程度の調査や、タワーマンションだけを対象にした調査など、母数や対象がまちまちで、結果も割れています。本記事では、⁠順位づけには使わず、公的な統計や評価基準、設計基準など、根拠を確認できるデータを中心に比べていきます。

価格:1階は安く、2階以上は階差が小さい

鑑定士が使う「階層別効用比」とは

同じ間取り・広さ・仕上げの住戸でも、階によって価格は違います。この効用の差を、⁠基準にした階を100とする指数で表したものが「階層別効用比」です。不動産鑑定評価基準は、区分所有建物及びその敷地の積算価格について、一棟の建物及びその敷地の積算価格に、各階層別、同一階層内の位置別の効用比で求めた配分率を乗ずる、と定めています。たとえば、⁠1階が1㎡あたり50万円、10階が60万円なら、1階を基準にした10階の階層別効用比は120です(関西不動産鑑定の解説例)。

1階を100とすると、10階は110前後。段差は1階だけ大きい

では、⁠実際の数字はどうなっているのでしょうか。山越・小松(2022)の推計(資産評価政策学会の2023年大会資料に掲載)によると、共同住宅の階層別効用比は、1階を100として、2階が105.2、3階が106.8、5階が108.0、7階が109.0、9階が110.0、10〜12階が110.4でした。

階層別効用比と価格差の目安

注目してほしいのは、段差の付き方です。最大の段差は、⁠1階から2階の約5.2%です。2階から10〜12階までは、合計でも約5%にとどまります。つまり、⁠1階だけがはっきり割安に評価されていて、2階より上は、1階上がるごとに平均0.7ポイント程度ずつ、なだらかに上がっていく形です。仮に1階が3,000万円の住戸なら、同じ条件の2階は約3,155万円(+155万円)、5階は約3,241万円(+241万円)、10階は約3,313万円(+313万円)という計算になります。

別の鑑定士の解説に掲載された19階建の実例でも、2階を100とした10階は108.8でした。数字は物件ごとに違いますが、「下の階ほど価格が低く、上に行くほど緩やかに上がる」という傾向は共通しています。ただし、⁠これらは一般的な共同住宅を対象にした推計や一例です。立地や物件の個別事情で結果は変わりますので、目安として受け止めてください。

時間:上の階ほど増えていく「見えないコスト」

エレベーターの待ち時間は、設計基準で目安が決まっている

上の階に住むほど、⁠毎日エレベーターを使います。その待ち時間は、⁠実は設計の段階で、目安が決められています。エレベーターメーカーの設計資料では、共同住宅の場合、平均運転間隔は、エレベーターが1台なら90秒以下、2台以上なら60秒以下が望ましいとされています。平均待ち時間は、⁠その半分が目安なので、それぞれ45秒、30秒です。ラッシュ時を想定した設計上の目標ですので、空いている時間帯は、もっと短いのが普通でしょう。

年間の時間ロスを試算する。10階なら年22時間、35年で約1ヶ月分

ここで、⁠試算をしてみます。前提は、⁠次のとおりです。1日に4回(片道)エレベーターを使う。待ち時間は30秒(2台以上の設計目標に相当)。階高は2.8m(メーカーの住宅用エレベーターの設計条件)。速度は分速60m。1階はエレベーターを使わない。すると、⁠片道の所要時間は、2階が約33秒、5階が約41秒、10階が約55秒です。年間(1,460回)にすると、2階で約13時間、5階で約17時間、10階で約22時間になります。エレベーターが1台だけで待ち時間が45秒なら、10階は年約28時間です。

価格差とエレベーター時間の試算

10階に35年住み続けると、約780時間、日数にして約1ヶ月分を、エレベーターの待ち時間と乗車に使う計算です。ドアの開閉や、⁠エントランスまでの歩行は含んでいません。低層階なら、⁠階段を使って待ち時間を避けるという手もあります。一方、⁠1階は、この時間がほぼゼロです。筆者が1階で一番ありがたく感じているのは、まさにこの点です。

価格差と時間を並べて考えてみましょう。10階の価格差313万円を、金利1.0%・35年のローンで上乗せして借りると、返済は月に約8,800円増え、うち利息分は35年で約58万円(年あたり約1.7万円)です。価格差は、⁠売却時にも価格として反映される傾向があるため、純粋な負担は、利息分が中心だと考えられます。一方、⁠年22時間を時給2,000円で換算すると、約4.5万円分です。つまり、⁠この前提では、10階の時間コストが、価格差の利息分を上回る試算になります。

もちろん、⁠時間の価値は人それぞれで、上の階には眺望や防犯などの価値もあります。ただ、⁠「価格差さえ払えば済む」わけではなく、時間という形でも対価を払い続ける点は、頭に入れておくと良いでしょう。

安全:防犯と災害時は、上下それぞれにリスクがある

防犯:4階建以上の共同住宅は、空き巣が少ない

警察庁の令和6年の統計では、住宅を発生場所とする空き巣の10万世帯当たり認知件数は、一戸建てが25.0、3階建以下の共同住宅が18.2、4階建以上の共同住宅が7.9でした。4階建以上の共同住宅は、3階建以下の約4割(0.43倍)にとどまります。ただし、⁠この区分は「建物全体の階数」であり、住戸が何階にあるかではありません。1階の住戸だけの数字は分からない点に、注意してください。一般に、⁠低層階は、窓やバルコニーに外部から近づきやすいと考えられます。1階や2〜3階を選ぶなら、窓の補助錠や、専用庭の防犯対策には、特に気を配りたいところです。

地震・水害・停電:1階にも上の階にも、それぞれのリスクがある

地震では、⁠東京消防庁が、東日本大震災後のアンケートや熊本地震の調査で、免震機能のないマンションでは、高層階になるほど家具類が転倒・落下・移動した割合が高くなると報告しています。ただし、⁠10階建は、長周期地震動の対象になる高層ビルとは性質が違います。気象庁の長周期地震動階級は、固有周期が1〜2秒から7〜8秒程度の高層ビルを想定した指標です。一方、⁠鉄筋コンクリート造の固有周期は、建築基準法の設計で使われる略算式で、高さ(m)×0.02秒が目安です。高さ約30mの10階建なら、約0.6秒です。それでも、⁠階が上がるほど家具が倒れやすい傾向はありますので、家具の固定は必須です。

水害と停電は、⁠1階と上の階で、リスクの形が違います。1階は、⁠浸水の想定があるかどうかが問題になります。購入前の重要事項説明では、水害ハザードマップ上の所在地が説明の対象です。一方、⁠上の階は、浸水しにくいものの、停電に弱い面があります。令和元年東日本台風では、武蔵小杉の地上47階・地下3階のマンションで、1階への浸水は防げたのに、地下3階の電気室が浸水して停電し、エレベーターや給水設備が一定期間使えなくなりました(国土交通省・経済産業省のガイドライン)。10階なら、⁠階段で上る高さは約25m(9階分)です。停電が長引けば、⁠水や食料の運搬が大きな負担になります。

暮らしとお金:音・眺望・管理費・税金の違い

生活音は1階と最上階が有利。眺望は上の階が有利

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、過去1年のトラブルで最も多いのが「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」の60.5%で、その具体的な内容では「生活音」が43.6%と最も多くなっています。生活音は、⁠上下の住戸の関係で起こるものです。下に住戸がない1階と、上に住戸がない最上階は、構造的に有利だと言えます。小さな子どもがいる家庭などは、下の階への気兼ねが少ない1階の気楽さを実感しやすいはずです。

眺望や日照は、⁠鑑定評価基準でも価格形成要因の一つです。山越・小松の資料でも、住宅地域では「眺望、景観等の自然的環境の良否」が価格形成要因になり得るとされています。上の階ほど眺望が良くなる傾向は、価格差の理由の一つでしょう。一方、⁠1階は、前面の建物や植栽によって日当たりや眺望が左右されやすいため、周辺環境の確認が欠かせません。最上階は、⁠屋根に面するため、暑さ・寒さの影響を受けやすい場合があります。屋上防水は、⁠管理組合が行う計画修繕の対象(標準管理規約のコメント)ですので、長期修繕計画で、直近の実施時期と次回の予定を確認しておきましょう。

管理費と固定資産税は、階が変わってもほぼ同じ

お金の面では、⁠管理費や修繕積立金は、階数ではなく専有面積などで決まります。国土交通省の標準管理規約のコメントでは、管理費等の負担割合を定めるにあたって、使用頻度等は勘案しないとされています。つまり、⁠エレベーターを使わない1階も、エレベーターの維持費を負担する考え方です。ただし、⁠実際の負担は各マンションの管理規約で決まりますので、購入前に確認してください。1階に面する専用庭は、標準管理規約では、専用使用権を持つ人が管理組合に専用使用料を納める形が想定されています。

固定資産税も、⁠同じです。地方税法では、⁠高さ60mを超える居住用超高層建築物(いわゆるタワーマンション)に限って、階が1つ上がるごとに「10/39」ずつ専有部分の床面積を補正して、税額を按分します(1階を100とする算式)。10階建は対象外で、階数による補正はありません。つまり、⁠価格は階によって約10%違うのに、税や管理費の負担は変わらないわけです。

おもしろい視点:10階と11階の間の壁、社長が住む階

10階建と11階建の間にある「法規の壁」

実は、⁠10階建と11階建のあいだには、法規上の壁があります。消防法施行令12条は、防火対象物の「十一階以上の階」について、スプリンクラー設備の設置を求めています。また、⁠建築基準法34条2項は、高さ31mを超える建築物に、原則として非常用の昇降機を設けるよう定めています。10階建マンションは、階高や屋上の計画にもよりますが、高さ31m以内に収まる例が多く、スプリンクラーの設置義務が生じる11階以上の階もありません。

また、⁠建築基準法施行令122条では、5階以上の階に通ずる直通階段を避難階段等とし、15階以上は特別避難階段とすることが求められています(一定の例外あり)。10階建は、⁠設備面の規制が重くなる手前に収まっている、という見方もできます。管理費や修繕費への影響は、物件ごとに異なりますので、長期修繕計画で確認しましょう。なお、⁠売却のしやすさ(流動性)は、物件や市況によって変わるため、この記事では価格差のみを扱っています。

社長は何階に住んでいる?(東京商工リサーチ)

最後に、⁠実際に選ばれている階の実データを一つ。東京商工リサーチが、集合住宅に住み、階数が判明した約50万人(504,200人)の社長を分析した調査(2019年9月発表)では、住居階数の全国平均は5.35階でした。売上高10億円未満の社長は5.56階、10億円以上は8.21階、100億円以上は8.36階。上場区分別では、⁠東証1部が10.26階、未上場が5.35階です。市区郡別では、⁠東京都中央区が13.37階で最も高くなっています。

業績が良いほど高い階に住む傾向が見えますが、都心の高層化といった立地の影響も考えられます。対象は社長に限られ、2019年の調査ですので、あくまで参考情報として受け止めてください。

10階建マンションは何階がおすすめかを示す階数別評価表

まとめ

10階建マンションの階数は、「価格」と「時間」の天秤で選ぶ

価格のカーブを見ると、1階だけが約5%割安で、2階から上は緩やかに上がっていきます。また、⁠上の階ほどエレベーターの時間が増え、10階では年約22時間、35年で約1ヶ月分にもなる試算です。時間とコスパを最優先するなら1階〜3階、バランスなら4階〜6階、眺望と静けさなら9階〜10階が目安になります。あなたは、⁠毎日の時間と、窓からの景色のどちらを大切にしたいでしょうか。まずは、⁠候補の物件で、エレベーターの台数と、ハザードマップ、長期修繕計画などを確認してみてはいかがでしょうか。

※本記事の内容は、⁠不動産鑑定評価基準、山越・小松(2022)の推計(資産評価政策学会2023年大会資料)、関西不動産鑑定の解説、総務省(令和5年住宅・土地統計調査)、国土交通省(令和5年度マンション総合調査、標準管理規約、電気設備の浸水対策ガイドライン)、警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」、東京消防庁、気象庁、地方税法・同施行規則、消防法施行令、建築基準法・同施行令、エレベーターメーカーの設計資料、東京商工リサーチの公開情報をもとに作成しています。
試算は筆者が前提を置いて計算したもので、実際の物件の価格・時間・費用は異なります。
個別の物件については、宅建業者・管理会社等の専門家にご確認ください。


冨田隼平

WRITER冨田 隼平
不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士ほか
大手信託銀行にて不動産売買仲介、その後業界最大手の鑑定会社にて不動産鑑定評価業務に従事。
現在は独立し、鑑定士として価格調査・鑑定評価・コンサルティングを提供するほか、エージェントとして売買・賃貸のサポートなども行っています。

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